脊髄腫瘍(脊髄髄内腫瘍、脊髄髄外腫瘍、馬尾腫瘍)
脊髄腫瘍
臨床像
脊髄腫瘍は、解剖学的には脊髄、神経根、馬尾神経、くも膜、硬膜および脊椎管内組織や脊椎に発生する腫瘍である。髄内腫瘍、硬膜内髄外腫瘍、硬膜外腫瘍に分けられる。
組織学的には原発性腫瘍と転移性腫瘍がある。原発性腫瘍はシュワン細胞腫、髄膜腫、神経膠腫、悪性リンパ腫および血管腫などがある。転移性腫瘍は乳癌、肺癌などがあり、さらに多発性骨髄腫もみられる。
発生部位は、解剖学的に大孔部、上部頸椎、下部頸椎、胸椎、腰椎、円錐、馬尾神経などに分ける。硬膜外は30%、硬膜内髄外50%、髄内20%くらいの発生頻度である。脊髄レベルでは頸髄20%、胸髄50%、腰髄20%である。好発年齢は40歳が多く、次いで50、30歳代といわれている。
脊椎および脊髄の臨床解剖
脊髄は、成人では脊椎より短く大孔から始まり、第1〜第2腰椎間の椎間板で終わる。それぞれの神経根はそれに相当する分節の脊椎から出るので、下部胸髄や腰髄は、それに相当する椎間孔からでるためにはくも膜下腔を長く走る。
脊髄の血管支配は左右の椎骨動脈が合流し、脳底動脈になるときに前脊髄動脈を出す。さらに、後下小脳動脈から脊髄背面を走る後脊髄動脈は2本平行して走り、互いに血管網を形成し、各髄節ごとに根動脈より分岐する。
脊髄腫瘍の病態生理
脊髄腫瘍は、硬膜外腫瘍、硬膜内髄外腫瘍および硬膜内髄内腫瘍に分けられる。脊柱管内で腫瘍が発生するために、脊髄や馬尾神経が圧迫され、血液循環不全をきたし、脊髄の浮腫などがおこる。これにより、神経症状が出現する。
@髄外腫瘍
・腫瘍は横方向に増殖する。 |
・硬膜外および硬膜内いずれでも脊髄以外から発生し、脊椎管内にみられる腫瘍を髄外腫瘍としている。 |
・大部分は脊髄後根周辺から発生し、早期に根性痛、知覚脱失をきたす。 |
・腫瘍がさらにおおきくなるとさらに、後根、後索、さらに脊髄の錐体路側索が障害され、同側の知覚障害から両側の障害された髄節の知覚障害、さらに運動障害がみられる。 |
・腫瘍が腹側にみられると、障害部位が頸椎の場合は、まず両上肢の弛緩性麻痺がみられ、さらに両下肢の痙性麻痺がおこり、温痛覚障害がおこる。 |
・腫瘍は縦方向に増殖する。神経膠腫が主体である。 |
・脊髄内にびまん性に腫瘍が発育するので、髄外腫瘍とはその神経症状がかなり異なる。 |
・まず、温度覚と痛覚が障害されて他の知覚が残る。知覚解離が生じる。 |
・膀胱直腸障害が早期にみられ、さらに知覚障害が上行する。さらに前角障害がみられることから筋萎縮をきたす。 |
感覚刺激症状 | 痛み |
運動麻痺 | 歩行障害、脱力 |
感覚麻痺 | しびれ感、鈍さ |
自律神経障害 | 発汗異常 |
・髄内腫瘍では、metrizamide ringの菲薄化と拡大や消失などの所見がみられる。 |
・硬膜内髄外腫瘍では、metrizamide ringの変形および欠損がみられる。 |
・硬膜外腫瘍では、metrizamide ringの歪み、圧縮、脊椎管内偏位などがみられる。 |
・筋萎縮性側索硬化症 |
・脊髄空洞症 |
・変形性頸椎症 |
・多発性硬化症 |
・くも膜下出血 |